「海ゼミ」聴講レポート 複数艇を乗り継いできたオーナーが語る、中古艇選びの重要ポイントとは?
3月21日から4日間にわたって開催された「ジャパンインターナショナルボートショー2024」。パシフィコ横浜会場の一角では、海の遊びを楽しむには欠かせないノウハウを各分野のエキスパートに学ぶ「海ゼミ」が開催されました。計18講座(15種類)の中から、3月24日に行われた「賢い中古艇選びの重要ポイント」の様子をレポートします。
講師として登壇した小川淳さんは、ボート歴30年以上のベテランボーター。複数の中古艇を乗り継いできたご自身の経験に基づき、中古艇の魅力と、購入の際に気をつけるべきポイントについて徹底解説してくださいました。
ボートを買ううえでまず重要なのは、「ボートを使って自分がどういう遊びをしたいかを想像すること」と小川さんは言います。
何でもできるオールマイティーなボートは存在しません。家族でゆっくり過ごしたいと考えているのにフィッシングボートを買っては具合が悪いですし、思いきり釣りを楽しみたいのにクルージングボートを買うのも具合が悪い。ボートを買ってみたはいいものの、イメージしていたような遊びができないとなると後悔につながります。目的を明確化させておくことが大事。これは新艇を買う際にも同じことが言えますね
ボートを使ってどんなことができるんだろう? と考えてみても、特に初心者の方はうまくイメージできないかもしれません。そんなときは専門誌を参考にしたり、レンタルボートを活用して実際に乗ってみることを小川さんはオススメしていました。
メーカーさんが提供しているレンタルボートのサービスでは、将来の購入を見据えて、最新のアトラクティブな艇が揃っています。また、その海域での遊び方について教えてくれるところもあります。実際に乗ってみることで初めて気づくことも多いですし、いろんな艇に乗ってみることをオススメします。入会金や月会費といったコストは必要になりますが、自分に合ったボートを見つけ出すためには必要な投資。決してムダではありません
さて、ボートを購入するとなった場合の最初の分岐点となるのが、新艇か、中古艇かという選択です。それぞれにメリット・デメリットがありますが、中古艇のメリットとして真っ先に挙げられるのはやはり価格の面でしょう。新艇に比べてリーズナブルな価格でマイボートを手に入れられる点は非常に魅力的です。
予算の考え方について、小川さんは次のように話していました。
『ここまでなら大丈夫』という予算範囲を決めておくことが大切ですが、艇の本体以外にも、駐艇料や保険、燃料代などなど、購入に伴っていろいろな形でお金が必要になります。艇自体の価格より2~3割くらいは膨らむことを想定して予算を考えておきましょう
また、前のオーナーが船に様々な装備を残していくことが多いので、そういったものが艇に付属してくるのも中古艇のメリットの一つと言えます。
ただし、もちろん良いことばかりではありません。小川さんの説明です。
中古艇といっても、新古艇に近いものから化石に近いものまであります。安いからという理由で古いボートを選んだ結果、修理費がかさんでしまうことも。特に、エンジンメーカーがすでになくなってしまっている艇や、パーツの供給が悪くなっている艇を選ぶと、後で苦労することになります。艇を買うときは、パーツの流通が良いかどうかという点もよく確認しましょう
欲しいボートの具体的なイメージが固まってきたら、設定した予算枠の中で、実際にボートを探し始めることになります。ここでまず注意したいのは「決して惚れ込まないこと」だといいます。
『やっと見つけた!』と喜び勇んで見に行きますよね。でも、その艇に惚れ込みすぎると、悪いところが見えなくなってしまうんです。難しいかもしれませんが、中古艇を選ぶときは、一歩引いて“冷めた目”で見るようにしてください。『悩んでいるうちに売れてしまうかも……』とドキドキしますが、先に売れてしまったら『縁がなかった』と諦めて、別の艇を探しましょう
中古艇の買い方は、大きく分けて2通り。1つは個人売買(オークションを含む)、もう1つがマリーナやショップから買う方法です。
個人売買は、基本的には『現状有姿』。つまり、今そこにある船の状態のままで買うことになり、整備などはすべて買い主側の責任となります。艇の状態にはピンからキリまであるので、注意が必要。名義変更や、廻航・陸送の手配なども自分で行う必要が出てきます。個人売買はトラブルも起きやすいので、目を肥やし、知識を増やしてからでないと難しいでしょう。初心者は手を出さないほうが無難です
下見までさせておいて、手付金を受け取ったところで姿をくらますような詐欺も横行しているのだとか。あくまで個人間の売買となるため、一つひとつの手続きに、かなり慎重になる必要がありそうです。
続いて小川さんは、艇の状態を確認する際のチェックポイントを詳細に解説。その一部を記載しておきます。
- エンジン等のドライブ周りを重点的に。
- エンジンオイルは必ず確認。乳化していたら水が混じっているサインなので、そういう艇は避けるようにする。試乗後にビルジが溜まっていないかどうかも確認しよう。
- ガンネルは損傷しやすい箇所。水漏れの原因になるので、修理の跡がないか等を確認する。
- 航海灯やワイパー、ウインドラス、前オーナーが艤装したGPSプロッター、魚探、デッキライト等々、各種装置は全て正常に作動するかどうかをチェック。
- 係留艇の場合は「電蝕(電気による腐蝕)」に注意。強靭なプロペラが、手でむしれるほどスカスカになってしまうことも。
これ以外にも、確認すべきポイントは多岐にわたります。非常に大変な作業ですが、自分で船を買うとなったら、後悔することのないように隅々までチェックしておくことが重要です。
この際に大事な点として、小川さんは次のように言います。
陸置艇であれば、試乗するためには下架が必要になります。また係留艇の場合は、船底等の確認のためには上架が必要です。どちらも艇の状態を確認するうえでは欠かせない作業ですが、下架あるいは上架にはそれなりの手間やお金がかかりますので、買う気がないのにお願いするのはマナー違反。試乗して問題なければ買うつもり、船底の状態に問題がなければ買うつもりだというくらいまで気持ちが固まった段階で、売主さんにお願いするようにしましょう
上記のようなチェック項目を自分でつぶしていくのが難しいと思われる方は、マリーナやショップを通じて艇選びをするほうが得策です。整備も行き届いており、安心して買うことができます。個人売買よりは価格的には割高になるケースが多いですが、「それを補って余りある安心感がある」と小川さんは言います。
ご自分の周りにアドバイスをしてくれるようなベテランがいないのであれば、マリーナやショップから買うのが良いと思います。先ほど申し上げたようなチェックポイントも、一つひとつ確認する必要はありません。試乗してみて、問題がなければ買う。そういった考え方で大丈夫ですよ
中古艇という選択肢には、新艇にはない様々なメリットがある一方で、気をつけるべき点も多くあります。その際どんなところに気をつける必要があるのか、非常によく理解できました。小川さんの経験を踏まえた実用的なアドバイスが詰まった海ゼミでした!
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